作曲・編曲をプロの方に頼むと、だいたい10万円以上するようです。
「プロになって皆を見返したい!」という妄執に取り付かれた生徒がなんとか、自分の曲を作品としてまとめるべく、編曲をプロに依頼したことがあります。「高っかいな~」と思いましたが、さて本質的にはどうでしょう?
そもそもが頼めるレベルではない
当時、私は彼を担当していませんでしたが、発表会等で聞く限り「うーん、ひどいな」が感想でした。何がひどいかというと、作詞・作曲ともすべて感性任せ。歌い方はラルクのハイドさんやB’zの稲葉さんの間違ったコピー。ピッチ不明、活舌最悪の状態です。
しかし本人の「音楽をやってきた」プライドは富士山並み。要するに先生の言うことなんて聞かない状態です。「なんで教室に来たんだろ?」くらい思っていました。それでも
「俺は本気でプロを目指しているんだ!=人とは違うぜ」
という意気込みを証明するために、「プロに頼んでオリジナルを作る」という作業をしておりました。
そんな中、何の因果か、私が彼を担当することになったのです。早速、プライドのかたまりである「オリジナル」の作り方を聞いたところ、「アコギでコードを弾いて歌詞をプロの編曲者に渡して楽曲に仕上げてもらっている」とのことでした。つまり「アレンジのほとんどは相手任せ」という状態です。それでもさすがはプロ、わけのわからないコード進行、不明なメロディラインでもなんとか形にしてありましたが、そもそもがめちゃくちゃなので、どんなに音が良くてもちっとも曲として印象に残りません。そしてこの外注編曲の最大の欠点は、「作曲技術面でのフィードバックがない」ということです。つまり、提出された駄目な曲を「今後こうすると良いでしょう」みたいなアドバイスは皆無なので、本人がちっとも成長しない、ということです。
編曲者にすれば、「依頼されたものを何とかする」 これが仕事であって、依頼者の成長を促す仕事ではない。
本気でプロを目指している姿勢を貫くべく20曲ぐらい作っていたようですが、どれもこれも似たり寄ったりです。いや曲調はそれぞれありますが、元が訳わからないメロディと歌詞ですから、どうしようもないところです。全然根本的なものが成長していません。彼は結局、誰にもアドバイスをもらえず、もらう気もなく、まともに本も読まず(いや読んでいたようだが理解できなかったそうだ)、情報も集めず、一人で作曲を続けていたのです。しかし、できれば作った曲はできるだけすぐに完成させたい。一方で、お気軽な金額ではない。そんなこんなで曲の完成と、量をこなすという2点に関しては、金額がハードルとなっていました。
「こ、これはいかがなものでせう……」と、あまりに不憫に思ったので、とりあえず「今の歌、作曲、歌詞、全部0点」の宣告をすることにしました。正直、これくらいのインパクトがあることを言わないと、人の話を聞かない状態でしたので。
さすがにグズグズ言いましたが、丁寧に説明し、
「15万出してできるものは、音がいいだけの意味のないオリジナルだ」
ということを理解していただきました。そしてただ否定するだけでは人としていかん、と思ったので、次の提案をしました。
「当方、作曲・編曲経験はありません。編集ソフトも基本、手元にあるもので対応しますので、音の質は落ちるでしょう。しかし作曲・作詞に対して意見のやり取りと最低限のカタチにたどり着くまでの指導を行い、費用は3分の1でやりましょう」
これは嫌がられるよな……
そんなことでテスト曲を作り始めます。DAWの使い方の苦労はちょっとおいといて、やり取りから。
(彼)「これで、お願いします。」(とコードと歌詞を出す)
(私)「えーと、BPMは?」
(彼)「?BPMってなんですか?」
(私)「……、じゃキーは?」
(彼)「キー、ですか?????」
おやおや? これはいやな予感がしてきたぞ。作曲経験がない私でも「これは危険!」という予感がします。案の定、すごいことになっていました。
(私)「ドラムパターンの希望とかは?」
(彼)「いや、適当に」
(私)「入れたい音とかある?」
(彼)「ピアノと、ストリングスがいい感じで」
(私)「あのう、コードとメロディがあってないんだけど」
(彼)「え? 合ってませんか?」
むっきゃーー!
さらに歌ったメロディの音の不明な箇所は全体の60%にのぼり
「こんなん、できるかぁぁあああっっ!!!」
という気持ちになったのを覚えています。それでも仕方ないので、聞いたメロディをコードにあわせて変更したり、いろいろやって何とか曲にしました。
で、彼に確認したところ、音作りや編曲はとりあえずOKのレベルだ、という判断になりまして、プロに頼む価値のあるオリジナルになるまで私ががんばることになりました。
この後、「気味の悪い曲編成や転調」
「他人の感覚を無視した意味不明な歌詞への突っ込み」
等々の厳しい意見を連発して今に至ります。だいぶやって作詞・作曲の方法論がだいぶ形になってきたので、プロ(?)にまた頼みだしたのが最近です。一応やれば何とかなるという事例です。あ、そうそう忘れてました。一応、一曲5万円で請け負ってきたのですが、最初のサンプルレコーディング・歌詞・曲への突っ込み、編曲、歌録り、ボーカルの調整などの時間を考慮すると、平均時給は400円を割り込みました。3倍でも1200円。ぎりぎり、ってところですね。プロに頼んで15万。妥当な金額なのではないかと結論付けてお開きとさせていただきます。

