「いえ、目立ちたがり屋の芸人です!!」
ステージに立つ際の心構えはここにある! 気がする。
このやり取りはササンオールスターズが、昔懐かし『紅白歌のベストテン』という番組に初登場で出た際、司会の黒柳さんの問いに対する桑田佳祐さんの返答です。爆笑しましたが、人前に立つというのはこういうことなのではないかと思います。
人に聞かせる、という意識はとても大事
カラオケの場合もそうですが、最初はどうしても「うまく歌いたい」と思う意識が前面に出ます。するとこれは感覚的な感想なのですが、こじんまりとした歌になってしまうような気がします。「上手なんだけど、なんか記憶に残らない、おもしろくない」という感じですね。ある番組でこっそり歌のオーディションをして、それを評価するというものを見たことがありますが、ライブハウスで歌っているにもかかわらず、「声が前に出てない、というかカラオケボックスの小さい空間で歌っている感じ」というコメントがありました。まさにこれですね。とくに関東以北のアマチュアに見られる傾向だと言った人がいました。
ステージは表現の場。相手の反応を引き出してこそ
1年ほど前、以前通っていた生徒が、別のところでステージに立つことになり、「どう歌えばよいでしょう?」という質問を受けました。それなりに技術力もついていましたので、言うことはただひとつ。「俺の歌を聴けっ!!」という気持ちで観客に向かって歌えばいい」です。まずはそういう姿勢で、相手の注意を自分に向けること、すべてはここから始まるからです。普段の個々の人間の性格なんてどうでもいいんです。歌う曲を決めたら、その曲が何を表現したいかを考え、それにステージ上の動き、声、表現を注げばよいのだと思います。明るく、馬鹿っぽい歌であれば、本人がシャイだろうが関係ない。馬鹿っぽく振る舞い、楽しそうに歌わねばならない。その切り替えが大事だということです。その生徒からは、「大成功だった」と連絡がありましたので良かったと思いますが、私のアドバイス云々と言うよりも、その踏ん切りをつけた本人の努力の賜物だと思います。
結局、音楽のひとつの要素に大衆性があるので、見ている側の視点は重要である。
オリジナルの楽曲を作っている人にたまにみる傾向ですが、歌詞を読んでも何がなんだかわからないことがあります。説明を求めると一生懸命説明し、「その言葉をなぜ選んだか」等々と話すのですが、この時点でアウトです。だって聞き手の私の印象が「訳わからん」なんですから。補足説明を見ながら聴く音楽なんてないでしょうね。こういう「自分はこう思う!」というものの考え方はあってよいと思いますが、音楽の世界ではどちらかといえば、「こう思ってもらうにはどうすればいいか?」を軸に考えなければいけないと思うのです。相手を楽しませようとする思考・姿勢、これこそ芸人に通じるものなのだと思います。ちなみに世の中わけ分からない歌詞も多々存在しますが、それでも「イメージ」として統一性がある。それでも聞き手を納得させる言葉回しを選択できるのは一つの才能でしょう。私には、無理!