ボイストレーナーが 「やっちゃいけない」と思うこと3

他のボイトレの対応や自分の反省をこめて思うことがあります。

 
ボイトレの良し悪しを判断する時、経営者の立場から言うと、どうしても「生徒が長続きする」という点を無視できません。そのための方向性としては「1.うまくなったことを実感できる」と「2.来ること自体が楽しい」という要素をはずすことは出来ません。そんな中、「この先生についていても駄目だな……」と思わせる要素があるようです。
 
 

原因がわからない、で終わらせてはいけない。

 
医大在学中にオーナーちゃんの教室に通い始め、発声の方法論の模索をしている珍しい生徒がいました。医者の勉強で使う専門的な解剖図など、興味深い情報を持っていましたので、研究材料として大変重宝したのですが、就職と同時に大宮に行き、そこで別の教室に通うことになりました。
 
その後遊びに来た時に、その教室の話をしてくれました。便利なところは防音ブースが多くあって生徒は空いてれば無料で使えるとのこと。いいな、うらやましいな。そんな金、ねーよ。先生が7人ほどいて選べるとのこと。この辺もスクール形態ならではの特徴といえるでしょう。一通りの先生に教わったそうですが、その中でカラオケ大会で優勝するほどの歌の上手な先生がいたそうです。
 
「で、どうだった?」と私。「いや、『僕にはどうして声が裏返るか分からない』と言われたので、すぐにやめました。」とのこと。まあ、当人が因果関係を大事に考えているヤツでしたので、合わなかったのでしょうが、これは先生としてはよろしくない姿勢なのではないかと思います。
 
 

わからないのは仕方が無い。でも原因を追求する姿勢を失ってはいけない。

 
そういえばチェーンに加盟して教室を開く際、こんなことを言われたことを思い出しました。「生徒の要望に応えようとしてあれやこれや研究していったところ、自信がなくなり、半ばノイローゼ気味でやめていった人がいた」と。程度の差はあれ、多かれ少なかれこういったプレッシャーはあると思いますが、これに対して言われたことが「先生は”発声”の先生です。英語の先生ではありませんし、それぞれのジャンルの専門でもありません。あまり欲張って、すべてのジャンルに精通しようとせず、英語の発音をきちんとしたければ英会話教室に通ってもらってください」でした。
 
確かに先生の精神状態や立場を守ることも本部としては必要でしょう。一方で「そんな向上心の無いことでどうする?」とも思いました。また「そういうノウハウを提供するのが本部なのでは?」とも思いました。そもそもオーナーちゃん、物販の店を全国FC展開する本部に勤めていました。FC本部とは加盟店様からロイヤリティという名の上納金をいただいています。それに対して何らかのメリットを還元する責務を負っている、そう考えています。「小さい規模ではできない実験や情報収集を通しての大掛かりなノウハウの構築も本部のお仕事なのではないか」と思ったのです。その場では言えませんでしたが。おおっと、ついつい話が外れていってしまいましたが、つまり歌の先生単体でも、常に目の前の問題の解決を模索する必要があるということです。左団扇で、自分ができることだけを教えてやりくりするのは先生としてどうなのか? とも思います。あ、でも学校の先生って毎年毎年知っていることだけを繰り返して教えているだけですねぇ……。いいのか、これで。