ほんと?!良かったね!!
「以前は5点だったんです!!」
・・・・・それも、
すごい、
です、ね・・・・・・
歌のお教室に来る生徒は、大きく分けて2つの動機が存在します。
ひとつはより上達するため。ひとつはコンプレックスの解消のため。お教室には、どちらかといえば後者のほうが多いです。
歌の教室は意外と敷居が低い。
わざわざ歌を習いに行く、というと勝手に「プロを目指す」という目的だと思い込む傾向があるような気がします。なによりも歌が上手でない人が、歌の先生の前で「駄目な歌」を歌うことには、かなりの抵抗があって当然ですから。しかし、歌のお教室に通うことは、「できないことをできるようになる」という意味ですから、実は何の問題もないのです。
コンプレックスが解消されると人生は結構、いや、かなり楽しい
表題の方は、現在も私の教室に在籍中です。私の教室にいらした動機は、銀行員(今は転職されています)という仕事上、どうしても歌う機会が多く、にっちもさっちもいかなくなり、一大決心でいらっしゃったとのことです。とりあえず歌っていただいた時のことを思い出すと、それはすごいことになっていました。声量はそこそこありましたが、音の上下がすべて曖昧でした。またEぐらいが上限で、それ以上のメロディになるとリミッターがかかったように、ずーっとE。まるでお経のようです。
ここでまず、考えなければいけないのは「誰かが、この方にピッチを変える方法を教えてくれたことがあっただろうか?」という点です。この状況の中で教える側としての判断は、まず、
- 音を取れる耳がある程度あるか?
- あるとすれば声のピッチを変える方法を身につけさせること。
この2点が最優先事項です。
そこでE以下の音域で音を出し、ある程度声で音が取れるか確認。これは大丈夫でした。とすれば、E以上の音の作り方がわからずに、リミッターがかかるという状態であると判断し、とにかく声の高低をつくる練習から始めました。ここで大事なのは、いい声を出すことや上手に歌うことは完全無視することです。なんでもかんでもいっぺんにうまくしようとすることは無理ですから。数ある問題の中から根幹の問題を見極め、かつ効果が実感できるところから攻める。そして自信をつけてもらいながら、徐々に進んでいくというように段階を踏むのが良いと私は思っています。
生徒がどんなにうまくなっても営業にはあまりプラスにならない!?
表題の生徒の方にたまに尋ねます。「歌うことは楽しくなりましたか?」と。
当然「あ、全然嫌ではなくなりましたし、楽しいですよ!」と帰ってきました。
今は転職されて、同僚たちと楽しく歌っているそうです。ところがおまけで彼はこんなこと私に言いました。
「あ、習ってることは絶対言いませんよ^^」。
…え??…?? いや、やっぱりか……。
基本コンプレックスに基づく動機からの受講です。「人にはあまり言いたくない」という気持ちも理解できます。ということで、「うまくなった人が新しい生徒を呼んで来る!!!」なんていうおいしいことは、まずありません。ボイストレーナーとは、まことに残念なお仕事です。ちなみに最近、彼はジャンヌダルクの「月光花」に挑戦していました。
「ビブラートがなかなかうまくできなくて……」。
「調子に乗るなーーー‼!!」、
と思う反面、楽しそうに歌っているのは喜ばしいことです。