怒涛のリベンジ

怒りは成長の糧になるか?

 
仲間内で「ふっふーん? なんなら自分で歌ったら?」と上から目線で言われて、ぷっちーんと来た男の物語です。(多少誇張しています)
 
 

自分で何とかすることに限界。そして扉を叩いた。

 
なーんて格好いい感じでタイトルを書いてみましたが、当時高校3年の彼は、ちょっと最初から歌えて調子に乗っている同級生に見下すようなことを言われまして、
 
「あったまきた。歌で圧倒してやる」
 
というあまりほめられたものでもない動機で歌を歌いだしました。理系の彼は、資料集めと実践を繰り返してきたようです。しかしながら結果はうまくいかなかったようで、とうとうオーナーちゃんの教室にやってきたわけです。で、最初に話合いをして、設定した目標ですが、
 
「よし。ぐぅの音も出ないほどけっちょんけっちょんにしましょう」
 
というこれまた大人気のないものとなったわけです。
 
とりあえずまずは敵の戦闘力の分析です。聞いたところ典型的なそこそこ声のいい、格好つけの歌い方で素人さんレベルでは「キャー格好いい!!」みたいなことを言われてしまう感じでした。一方で、音楽的なことは全然理解していませんし、発声も「俺、ミックスボイスができるようになったぜ!」みたいな感じの凡人レベル。よし、大丈夫。一つずつ積み上げていけば別次元になることは間違いなしです。ではレッツスタート。
 
 

本人が求めるものをとりあえずクリアしていきましょう

 
さてその彼ですが、声質としてはとてもクリアで硬めの声質でした。そして最初に「歌いたい」と言ってきたものはボカロとシドさんでした。つまり
 
「高音域を歌えること=歌が上手い」
 
という思考パターンでした。ということでまずは高音を出せる方向で練習を始めます。とはいっても基本は一緒ですから基礎からこつこつと。1年たつとボカロの音域はほぼ出るようになりました。
そしてとにかく高音が出るようになると、今度は本人自身が声のトーンを気にしだします。とにかく硬い。キンキンする。ということを自分で認識してもらい、納得した上で、高音域で「聞きやすい」声を作ります。これはそれほど時間がかかりませんね。そして高音域がだいぶいいレベルで歌えるようになってくると次の課題が出てきます。それは
 
「声の色気」
 
高音他音のノリのある歌はいいのですが、ミディアムテンポのちょっと聞かせたい曲とかにはその声質では対応できない。そこで気がつくのが
 
「声の太さ」
 
です。本人がその必要性に気づき、豊かな響きの作り方を教えて身につけます。すると高音域にも同様の方法を使い出します。すると声質としてはほぼ完成に近づきます。ここまで出来たら後は曲の理解と歌いまわしの選択。こんな順番で積み重ねて2年、いよいよ本番です。
 
 

圧倒的。あ、勝った。

 
さていよいよイベントで、敵である奴とバンドでタイバンです。彼のバンドは結構いいメンバーを集めたので、ある程度難しい曲ができるとのことで、選んだのはunion square gardenさんの「シュガーソングとビターステップ」という曲です。16ビートかつ高音域多音の歌いづらい曲です。そして終了後、録画したものを見せてもらったのですが、
 
「圧倒的」
 
バンドメンバーにも恵まれましたね。多少走るところもありますがリズムが崩壊せずにまとまっていました。そして、学生のライブであるにもかかわらず、歌がクリアに聞こえるしまとまり感も高い。他のバンドのも聞きましたが楽器隊は基本バラバラですし、歌なんてまず聞こえない。そしてイベント終了後、敵である奴から
 
「歌、上手いね……」
 
と声をかけられたそうです。完全勝利ですね。努力が才能を凌駕した瞬間です。
 
 

そうは言ってもやっぱり営業にはつながらない。

 
「どうやって歌うんですか?」などなど、イベント後いろいろ質問されたそうですが、基本、やはり歌を習っていることは秘密なんだそうで。ということで、積み上げたことや大事なことはまったく説明しないで表面的に適当に答えたそうです。ということはつまり、
 
「新規生徒獲得にはつながらない」
 
という残念な結果になる訳です。一方で発声を教える技術の流出、という点では結構秘匿性が高い、ということも言えるのではないか、とも思います。まあ、通常レッスンは基本、本人の状況に合わせて必要な処方をするのため、総体・体系として教えているわけではないので、様々な状態がある他人に対して簡単に対応できるとは思えませんが。
 
なんにせよ2年
 
長いか・短いか。それは皆さんが判断してください^^