合唱の声と、ポップスの声は違う

仕事でどちらも使う場合、使い分けが大変

 
もう長いこと一緒に教室をやってもらっている女性S.I.の、ボイストレーナーを始めた頃に戸惑っていた現象です。
 

クラシックベースの声、ポップス用の声。

 
S.I.さんは、現時点で15年以上、結婚式の聖歌隊で賛美歌を歌う仕事をしています。その途中で「ヘイ!歌の先生に、ならない?」とお誘いしたのがきっかけで現在に至ります。彼女は「音楽で食べていく」という決意で物販のバイトをしながら聖歌隊を続けていたのですが、うちの教室で働くことになり100%音楽づけになりました。
 
さて先生を始めて3ヶ月ぐらい、彼女はあることに悩まされます。それは式場に入ってリハーサルをすると、必ず「はい、ちょっと来て。声、目立ちすぎ」と修正が入るようになったことでした。逆に式場の仕事の後に教室でのレッスンをすると、これまた声がうまく対応しない。これにはけっこう困ったようです。結局4~5カ月ぐらいで、声の出し方を切り替えられるようになったようですが、求められている声がやはり違うということがはっきりした事例です。
 

違いは、調和する声か、目立つ声かという点

 
複数人数で賛美歌を歌う場合、それぞれの声が上手に一体化して聞こえることが重要になります。つまり個々人の声の個性を出しつつ、他人の声も尊重して混じり合わなければならないのです。それとは逆に、ポップス・ロック調の歌では、声は基本的に目立たなければなりません「声が前に出る」という項目で書いたのですが、これには、どこを振動させるか、させないか、という点が大きなコントロール要素であると思っています。
 

このように、ポップス・ロック調の曲でのコーラスやデュオというのは、合唱と違い「個性と個性の調和」であるということになります。そしてこれは声質の相性があると考えられます。だって歌声を調和させようとしないできれいに聞こえる、というものが求められるのですから。そんな人がいたら結構楽しく一緒に歌えそうですね。そういう発見も歌う醍醐味の一つだと思います。
個々人の声の個性を出しつつ、他人の声も尊重して混じり合わなければならないのです。
と賛美歌を歌う場合のことを言っています。これと、ロックポップスの「個性と個性の調和」の違いが分かりにくいので、結論が伝わりにくくなっています。