どうすればいいでしょう?」
「ごめん、話だけではさっぱりわからないわ」
まじめに質問されていますので、まじめに答えてます
こういう研究をしていると、タイトルのような質問をされることがけっこうあります。でもね、これだけでは何にも答えられないのです。
医者と一緒
これは「うまく歌えない」ということを一生懸命説明して、「何とか突破口を開きたい」という気持ちの現れですが、「その説明そのものが正しくない」ことが多すぎるため、判断ができません。なぜ正しくないかと言えば、自分で「こうだろう」と思い込んでいることと、実際に自分の体内で起こっていることが乖離しているからです。逆に一度でも歌っているところを見たり聴いたりできれば、たいていの原因は推測できます
さて実際のレッスンでは、推測した原因を、より確定的なものにしていかなければいけないのですが、この身体の動きに対する誤解や理解不足が、レッスン中にも障害になります。一番困るのが、自分で実際に声を出しているにもかかわらず、
「どこに力がかかっていますか?どこで言葉を作ろうとしていますか?」
と聞くと
「よくわかりません」
と言ってしまう生徒です。これでは症状が特定できません。ということは「治療方法も特定できない」ということになります。患部が分からなければ、処方箋も処置法も特定できませんね。「歌がうまくなりたい」ということは自分の肉体と向き合うということにほかなりません。
そんなわけで、初対面で上記のような質問をされますと、
「ごめん、判断できない」
というお答えになります。適当な答えほど失礼なことはありませんから。一方で、
「ただで教えてもらおうと思うな!」
という気持ちがないと言い切れないのがオーナーちゃんの人間の小ささかもしれません。ごめんね……。