プロモーションビデオの扱い

80年代アメリカで爆発的に広がった気がする。

 
ちょうどこのころ、オーナちゃんはアメリカ在住(12歳ぐらい)でしたので、アメリカンポップスのプロモーションビデオ(PV)がよくテレビで流れていました。このことで気になっていることがあります。
 
 
日本のPVはちっともテレビで流れない。
日本のバンドやアーティストがよく「PV撮影やってました」というコメントをテレビでするのを見かけますが、作ったPVってどこで見られるのでしょうね。最近でネットで見られることが多くなりましたが、90年代00年代などは、TVでPVの一部を流すことはあってもフルで流れることはほとんどなかった気がします。これはどういうことなんだろう、と考えたことがあります。
 

PVに対する認識の差

 
表題でもあるとおり、80年代以降、アメリカのTVでは絶えずPVが流れていました。それも結構おしみなくフルで。すると音楽としても最初から最後まで聞いちゃうわけです。一方で「本人が登場して歌っている姿」がTVで流れるのは稀でした。このことから次のことが考えられます。それは
 
「PVは自分の代理。自分が演奏する手間をごっそり省いてくれるツール」
 
という思想があるのではないかということです。とにかく視覚表現として面白いものを作り、楽曲もクオリティを高くする。それをあちこちに流すことで、本来えっちらおっちら移動してセッティングして演奏しなければならないプロモーションを、かわりにやってくれる。そして本物が見たければライブに来てね。という思考です。ここで考えられる利点は
 
1.手間隙が省ける
2.時間・距離を意識せず拡散できる
3.実際に移動・演奏するのに比べてローコストである
4.安定したクオリティーでプロモーションできる
 
といったことが挙げられるのではないかと思います。移動するということは金のかかることですし、巨大なアメリカ国土を考えると日本の比ではありません。また実際に演奏すると、状況や体調等のファクターで音や演出のクオリティにばらつきがでるのも否めないでしょう。こんなことなら「PVで宣伝したほうが効率的」という判断がなされた可能性があると思います。そしてそれはCDのセールス、及びライブへの動員を目的としていたといえると思います。
 
一方、日本ではどうでしょうか。基本歌番組などは本人自らが出演するのが基本とされている風潮があるように感じます。PVが盛り上がりだけ流れて、そこで興味を引いたら、本人出演の番組を見る、番組を見た人がCDを買う、ライブに行く、といった流れになっているように思います。さてこの状態で、PVを全部流してしまうと、どんなことが起こるかを予想すると、視聴者が「満足しちゃう」という点が考えられると思います。番組をすっ飛ばしてCDやライブに行く。これはこれで別にかまわないのかもしれませんが、本人出演の番組的には困ったことになるのかもしれません。よくわからんが。反対に本人を番組で見られるのだからPVは別にいいや、という真理も働くのかもしれません。いずれにせよ、日本におけるPVの価値はアメリカに比べて低いと感じている次第です。
 
 

PV製作には金がかかる。費用対効果はどうか?

 
アメリカの場合、その効果は絶大だと思われます。だって移動しなくていいんだから。演奏しなくていいんだから。多少大きな金額を突っ込んでクオリティの高いものを作っても十分働いてくれるわけです。日本の場合、PVが流れない=PVが働かない、と捉えると、駄目社員一人抱えるようなものです。まあ月給ではない派遣社員みたいな扱いですかね、一時的出費となりますので。そんなことでコスト圧縮に動かざるを得ないのでしょうか、「うーん、金がかかってないなぁ……」と思うものがけっこうあります。「にしても、せっかくPVを造るんだったら、もうちょっと効果的に何かできないのかな?」と。
一方、情報伝達の仕方がここ何年かで劇的に変わってきてしまっています。その中でこの内容に即するものとして重要な要素と思われるのが、
 
1.基本「劣化しない」データ。
2.複製が無制限に可能。
 
という2点です。これはネット上にPVや音源が流れて、いつでも聞ける状態にある場合、「CD買わなくても、いいんじゃね?」という傾向が生まれてくるということを意味するのではないかと思います。それは資金回収が難しくなることを意味します。うーん、大変だ。こんなことで、日本の音楽市場の目論見からPVがフルで流れる機会が大変少なくなってしまっているのではないかと、勝手に考える次第です。
ま、あまり気張ってよいPV作って、フルに流しちゃったりしたら「ふー、よし満足!」といってCDも買わなければライブにも行かない。そんな人が増えることは間違いないしょうから、PVの存在価値も捉えなおすことが必要なのかもしれません。
ま、私には関係ない次元のお話ですが。