※個人の感想です。
なぜこれほど盛り上がったのであろうか
6年ほど前に第一次、というか最盛期のボーカロイドブームが10代、20代前半の生徒に起こりました。時間が経って少し判断ができるようになったと思うので、書いてみたいと思います。
基準は素人。だからこそ少しでもいいものであれば受け入れられる世界
一般に世の中に流れている歌は完全にプロレベルが基準になります。それに対してボカロの世界は基本「となりのお兄ちゃん、お姉ちゃん」です。そしてその中でウケる曲の要素は何かというと、「早い」「高い」「難しい」です。あれ? どこかで書きましたね? そうです。学生時代におけるカラオケのうまい評価と同じ基準です。本来なら歌いこなせそうもない難曲でも「ボーカロイド」なら歌ってくれるのです。まずこれが一つめの大きな要素です。
次に歌詞です。アニソンの回でも書きましたが、売れる売れないを無視して言いたいことを書いてあります。特徴的なのは「大人は分かってくれない」という要素がかなり入り込んでいる。恋愛曲にしても、現実の恋愛というよりもファンタジー感漂うものが多い気がします。つまり「思春期バリバリ」の感性にフィットしたのが要因だと思うわけです。3つ目は曲調ですね。これも自由です。やってみたいことをただやる。1つ目の要素を踏まえたうえでさまざまな曲調が出来ます。最後は「歌い手」。「となりのお兄ちゃん、お姉ちゃん」の中で普通より全然うまい、という人が脚光を浴びます。そしてその基準がかなり高まったのが6年ぐらい前です。「プロではないけど、プロ並みに歌える」という何人かの歌い手がもてはやされていたのが最盛期でしょう。
なぜ盛り上りが伸び悩んだのか?
時間が経ち、前にボーカロイドが好きだといった生徒にちょっと聞いてみます。「ボカロ、最近聞いてる?」と。するとけっこうな割合で聴かなくなっています。特に仕事を始めたりしていると、まったく聴かなくなっている人もいました。つまり成長に伴って精神状態が成熟してくると、共感が薄れていくようです。
「しかし、学生は常に存在しているので根本的な原因とはならない」という意見もあるでしょう。確かにその通り。しかし最も盛り上がった時期に比べると、新しく作られる曲たちがイマイチぱっとしない傾向があると思います。それは自由気ままにやりたい放題、という姿勢から「ウケたい、好きなあの曲みたいのが作りたい」という二次的な欲求にすり替わってきたのが原因ではないかと思います。まるで普通の音楽市場みたいですね。歌い手も同様です。
また、ボカロの世界で受ける歌い手の声が、一般にあまりウケないという現在の状況があるのではないかと思います。ボカロの世界で受けるのは、基本的に「イケ面ボイス」と「可愛いきれいな声」。そしてこれはどちらか言えば「ボーカリストとしていい声」よりも「声優みたいな声」が近いと感じています。何人かアニソン歌手としてデビューしていますが、一般の楽曲と比べるとやっぱり存在感が薄くなってしまっている感じを受けます。当然例外はいますが。要するに継続して音楽活動している人が極めて少ない、という現実がなんとなく「ボカロってすばらしい!」という発想にブレーキをかけている可能性があるということです。
ちゃんと育てようとする機関があれば、違うかもしれない
ボカロの世界でもトップレベルはけっこうすごいな、と思います。しかし、その段階でできるものをそのまま世に出して、「受ければOK、受けなければチェンジ」という使い捨て感があるように思うのです。「せっかく可能性があるのであれば、大きく育てたほうが後々いいのでは?」と経済的な計算を無視していることを承知の上で、感じてしまいます。