PAさんの音作りの方向性

きちんと検証しておかないと、まずい気がした。

 
前にPAさんが代わって、ちょっと慣れるまで仕方ないですね、みたいな事を書きましたがその続きです。
 

1年半たった。3回使った。しかしながら・・・である。

 
まあ、ね、こちらもカラオケ音源での発表会なので、なんともあいまいな要素を残してしまうのですが、そしてライブの音に対する判断基準としての「ライブで聴いている音の回数」が実際に携わっている人から比べると屁みたいなものになってしまうのですが、それでもやはり
 
「聴きづらい、歌いづらい」
 
といった主観的な感想は否定できないものであります。そしてそれが出演者に結構共通した感想になっているという事実は見過ごすことは出来ません。
 
「ん~・・・どうしよう・・・」
 
確かにオーナーちゃんは一応お客様という立場ですので、「なんとかして」という要求はできます。また極端な例で言うと「PAさんを変えてください」ということも出来ます。しかし、「なんとかして」と丸投げをしてしまうと、どこをどう直したのかということがさっぱり分かりませんし、「これ以上できません」というコメントが来た場合、それ以上どうすることもできません。また後者の手段をとることは、人間関係上あまりよろしくない。PAさんの人間性とその技術は別物ですし、人としてはとても良い方ですので。そこでお互いに「ああ、うまく行ったね^^」という結末を迎えるにはどうすればよいだろうか? と思案することになりました。
 

そうだ。一流どころの方に基本方針を訊いてしまおう、そうしよう。

 
オーナーちゃんが住んでいる地域に、かなりご高名なH@Nさんというギタリストの方がおります。現PAさんも、先のPAさんも当然のごとく知っていて完全リスペクト状態にある方です。今までお近づきになる機会が全然なく、あちこちで名前だけ聞いていたのですが、ここ3ヶ月前からギタロー氏を通じて知り合いになり、サシで9時間とか「げっはっは!」と焼酎を飲み倒す感じになりました。まあ半分以上は政治・経済の話とバカ話ですがw。当然PA経験も豊富な方ですので、
 
「すみません、基本的なPAの考え方を教えていただけませんか?(焼酎1本で)」
 
とお願いしたところ、快く相談に乗っていただきました。よし、これでPAさんに提案しやすくなったぞ!っと。また現PAさん、先のPAさんにもそれぞれやり方をうかがって、総合的に「この方向で考えればいいかな」というものが出てきたと思います。まあ、どこまできちんと理解できているかはちょっと不安ですが、ざっくりとオーナーちゃんが理解したものをあげていきます。
 

PAとしての基本方針(出音・中音)

 
1.イコライザーは「引き算」である。そして基本ハウリング防止である。
2.生音はできるだけ、そのままの音色で出す。
3.ボーカルがメインであれば、ボーカルがきちんと聴こえないと意味がない。
 
”出音”というものの意味ですが、客席に向かってミキサーを通して出す音を指します。あのでっかいスピーカーから出る音ですね。メインスピーカーということもあるみたいです。コレに対して「生音」はギターアンプが鳴っている音だったり、ドラムのそのものの音などがコレにあたります。そして「中音」というものは「ステージ上の演奏者が演奏の全体を知るために、ステージ上の演奏者に向けて出す音」を指します。そしてその際にステージ上に向けて音を出すスピーカーをモニタースピーカーといいます。まあご存知の方は「なにをいまさら、ふんっ!」と言う感想をお持ちだと思うのですが、まあ完全に知らない人向けという視点で書いていこうと思います。つまりライブハウス内ではPAさんの扱う音は外と内の2種類のバランスをとる必要があるということになります。そしてそのバランスのとり方は、ざっと
 
①パンニング(左右のどの位置から音が出ているようにするのか)
②ゲインコントロール(それぞれの音をどの大きさに設定するのか)
③イコライジング(それぞれの音を”どのような”音色で出すのか)
 
の3つになるのではないかと思われます。そしてPAさんの個性や腕が顕著に現れるのは、③のイコライジングということになるわけです。
 

イコライザーの個数

 
さてさて、次に一体いくつのイコライザーが使用されているのでしょうね?という点を軽く見ていきます。当然ライブハウスごと、状況ごとによってかなり異なるとは思いますが、どうやらドラムのバスドラには、がっつりグラフィックイコライザー(GEQ)を通していることが多いようです。理由としては
 
「どうしても通常だと聞き取りにくい音だから」
 
みたいです。他の楽器・音の周波数とぶつかってしまうようですね。それを回避してお客様にきちんと聴こえる音を作るようです。次に中音のモニタースピーカーの系列ごとに1台GEQが入っています。系列とはステージ上でも複数個スピーカーがあって、それぞれの演奏者に聴こえるようにするのですが、ステージ上の場所によって聞こえ方がやっぱり違うのでそれを調整するためのものです。小さいところだとステージ中心足元から上に音を出すモニタースピーカーと、ステージに向けて左右から全体を流すモニタースピーカー、そしてドラムの横にあるもの、ぐらいが定番でしょうかね。よく知らんけど。これで2~3系統でGEQもその数だけ必要になります。
 
さらに次は当然出音に対するものも必要になります。左右で1台ずつ? 全体で1台? どっちでしょうね? まあとりあえず客席に向けての音の調整というものが必要ですので、ここでまたGEQが必要になってきます。とまあこんなことでおそらくイメージよりもたくさんGEQを使用しているということがお分かりなのではないかと思います。ここにミキサーについているそれぞれの音に対してEQがついているので、なんともまあイコライザーだらけということになります。そしてバスドラ用のGEQ以外の第一目的は、「ハウリング防止」ということになります。
 

1.イコライザーは「引き算」である。そして基本ハウリング防止が目的である。

 
やっとこさ基本方針の1番目にきました。長いな、今回……。ま、頑張ることとします。そんなことで様々な箇所にGEQが噛んでいるわけですが、まずはライブハウスごとに
 
「どのように音が反響するか」
 
というチェックをする必要があります。やり方はいろいろあるそうですが、分かりやすいのはGEQをフラットの状態にしてゲインをあげた後、ステージ上のでマイクチェックをしながら、それぞれの周波数をひとつずつ3DB(デシベル)ぐらい上げてみるそうです。すると全然変化しない周波数帯と、ハウリングをしそうな箇所とが分かるとのこと。変化しない周波数帯はまた0に戻して、ハウリングをしそうな変化が見られた箇所を逆に下げるそうです。で一箇所発見するとその周波数の倍数の周波数帯もハウリングを起こす要因となるそうでそこも同様に下げることになります。200Hzがハウリングを起こした場合、400Hz、800Hz、1.6kHzも「怪しい」ということになるそうです(倍音の問題だそうです。※倍音が分からない方はググって下さいね^^)。ざっくりとはこんな感じで「まずい周波数帯だけ」カットするという引き算を行うということになります。すると全体の音量がちょっと下がりますので、ゲイン(ボリュームですね)で調整する。なるほどシンプルだ。次に聴覚上はあまり関係ないけれど、たぶん何かに影響しているであろう周波数帯(20Hz~40Hzや10kHz以上など)をどうするか? ということがポイントになりますがそれは
 
「聴覚上聞こえないのだから、①動かさない or  ②カットしてしまう」
 
という判断が生まれるようです。私どもが使用しているライブハウスはコンクリート作りで吹きぬけという、どうやら高音域帯が元気に反響しまくる構造になっているらしく、前のPAさんは、10kHz以上はごっそりカットしていたそうです。ここが反響しまくっていると、どうも聞こえてもいない音なのに「もやんもやん」した感じの音になってしまうんだそうです。へぇーーー。この辺はそれぞれの演奏場によって千差万別なのでしょう。
 
次に中音のGEQの設定ですが、ハウリング防止は同様ですね。一方で外音のセッティングと違う箇所があります。それは
 
「中音は外音の音も影響してくる」ということです。
 
確かに客席の方向にスピーカーは向いていますが、スピーカーそのものが振動しているためステージ内に聴こえないわけありません。そしてこの聴こえてくる外音と中音が同時に鳴ると、余計に聴こえてしまう周波数帯が出てくるということになります。特に低音と高音は向きが違っても聞こえてしまうようで、外音が全体の周波数帯をそのまま出すのに対して、中音は低音、高音をやや下げて中音域を中心に鳴らすことが多いようです。当然スピーカーの位置関係や会場の大きさによって代わってはくるそうですが、とにかくモニタースピーカーの音は外音の影響を加味しなければいけないようです。そしてそれは演奏者が演奏しやすい=聞きやすいものであればよく、「中音と外音は、音質が違ってよい」ということも言えると思います。
 

2.生音はできるだけ、そのままの音色で出す。

 
生音はそれぞれの演奏者が「こういう音がこの曲に必要だ」というもので鳴らしますので、基本的にPAさんが勝手に音質を変えていいものではありません。しかしながらここでもハウリングや他の音とのバッティングが生じて聴きづらくなっている時に、「いかに生音を生かしつつハウリングをする余計なところを取り除くか」が腕の見せ所のようです。木の周りの雑草を抜く感じでしょうか。とりわけボーカルの邪魔をしないことは重要な要素ですので、試行錯誤が行われるのではないかと推測するのですが、ここであまりに余計なことをすると演奏者からのクレームとなるわけです。(「これは俺の音じゃねぇ!!」みたいな)逆に全然音作りが分かっていないバンドなどは、ある程度調整するということもやるみたいです。なんにせよ、「演奏者の作った音がそのまま出せる状態であればそれでよし」が基本的な考え方のようです。
 

3.ボーカルがメインであれば、ボーカルがきちんと聴こえないと意味がない。

 
さて最大のポイントとなりますが、「ボーカルが聴こえる」ということを実現するためには、一般的に方法論が2方向あるようです。それは
 
a.ゲインをあげる
b.GEQで音量は同じでも、「聴こえる」声にする
 
です。大体私などDTMを始める前までは「聞こえないな、ボリューム上げちゃえ^^」でしたので、aの考え方でしたが、どうやらそうではないらしい。当然声質や声量の問題もありますが、やはり全体の音に負けずに聴こえる周波数帯があるわけです。
 
そしてそれは歌う人によって結構異なるので、「そこをどう調整するか」という点もPAさんの腕の見せ所となるわけです。「なぜゲインであげないか」という点ですが、ゲインはすべての周波数帯の出力を上げてしまうので、ハウリング等のオイタをする箇所まで上がってしまうのです。また聴こえていなかった余計な音がゲインで上がってしまったために、悪さを始めるという現象も起こりやすい。そしてこのボーカルに対する最大のポイントは
 
「マイクの特性と、PAさんがこういう声がよい、という方向性によって代わる」
 
ということです。仮にボーカルがきちんと聴こえる音色になっていても、いじりすぎでしまって普段と違う声の感じになっていたり、逆にマイクを信用しすぎて何もしないため、マイクに特性の感じが出てしまったりするわけです。このように演奏者とPAさんの方向性が違うためにお互い「???」となってしまうのは残念なことだと思うわけです。
 
さて最後になりますが、いろいろ調整しているものをぶち壊す現象があるそうです。それは
 
「生音、でかすぎ!!」
 
というものだそうです。せっかく音量や音質を調整してメインスピーカーから出そうとしているのにステージの音がでかすぎて、生音もがんがん外に聴こえてしまうケースが結構あるそうで。ドラムとギターに多いようで。そんなときに、
 
「はいーー、もっと静かに叩いてく・だ・さ・い・ね!!」
 
と言えるかどうかがPAさんの要素で最も重要だ、H@Nさんは言っておられましたw
ということで、PAの考え方の方向性、でした。うーん、上手に今後に生かしたいものです。